【2018 西日本豪雨】避難生活、女性はストレスだらけ 安心できる災害対策は




 西日本豪雨の広島、岡山県などの被災地では依然、多くの人が避難生活を余儀なくされている。
長引く避難所での暮らしは被災者にとって心身の負担は大きいが、女性が抱える問題は特に深刻。
着替えやトイレ、見知らぬ男性と一緒の空間と、ストレスや不安を抱く女性は少なくないからだ。
今回の豪雨でも女性に配慮した避難所運営など災害支援のあり方が改めて課題となった。

声あげづらい女性たち
「避難所に来た当初は仕切りもなく、トイレや体育館のカーテンに隠れて着替えをしていた」


 全体の約3割が浸水被害に遭った岡山県倉敷市真備(まび)町。
市立岡田小学校で避難生活を送る同町の女性(40)は7月中旬、取材に対してこう打ち明けた。
 岡田小は豪雨で真備町内の避難所のひとつに指定され、開設直後に最大約2千人が避難した。
しかし、雑魚寝(ざこね)するような状況でプライベートな空間はなく、布のカーテンを組み合わせた簡単な間仕切りによる「個室」ができたのは、開設から1週間が経ったころだった。

西日本豪雨発生直後の岡山県倉敷市真備町で開設された避難所=7月10日
女性によると開設直後は、小学6年の長女(12)とともに体育館の舞台や窓にかかっているカーテンに隠れて、着替えるしかなかったが、他の被災者も大変な状況の中、「更衣スペースがほしい」といった要望はできなかった。
布による間仕切りができてからは、着替えや、洗濯した衣類や下着も干せるようになったといい、女性は「本当にありがたい」と話す。


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 ただ、猛暑が続く避難所では、急遽(きゅうきょ)設置されたエアコンの効きをよくしようと、日中は間仕切りのカーテンを上げている人が多い。
避難所で取材をしていると、夜間にはいびきや足音が響くという声も聞いた。
さらに暑い日が続く中でも、肌の露出を気にしてか、長袖や長ズボンで過ごす女性の姿もあった。
間仕切りができたからといって、知らない人たちと同じ空間で雑魚寝することには変わらない。
しかし、「みんな同じ状況だから」と自分を納得させ、不安があっても声をあげづらい女性は多い。



布のカーテンを組み合わせた間仕切りで個室を作った避難所=7月15日、岡山県倉敷市真備町

過去には犯罪被害も

 避難生活の中で女性をめぐる問題は、これまでの災害でも取り上げられてきた。
内閣府が平成29年に行った調査によると、28年の熊本地震の被災者377人のうち、「避難所で男女別の配慮がなかった」と答えた割合は63・1%にも上り、避難所での女性へのサポートの必要性が浮き彫りとなった。
専門家によると、プライバシーの問題だけでなく、性被害といった防犯上の懸念もあり、多くの女性が、不安を抱えながら避難生活を続けるケースがみられるという。
過去には女性や子供が被害者となる性犯罪も起きている。
熊本地震では、小学低学年の女児にキスをしたとして男が逮捕される事件が発生。
複数の避難所で男が女児に抱きつく様子などが目撃されていたという。

女性の視線を取り入れる

 阪神大震災や東日本大震災など過去の経験をもとに内閣府の男女共同参画局は25年、男性だけでなく、女性の視点も生かした防災対策をまとめた指針を作成。
女性防災リーダーの育成や、避難所に授乳室や男女別トイレを設置することなどを自治体側に求めており、このような視点から災害対策を考える自治体が増えている。


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 29年の内閣府の調査では、「避難所運営に男女別の視点を想定しているか」という問いに対して、全国1631の自治体のうち87・2%が「視点を入れている」と回答した。
被災時に必要な対策を独自のガイドラインとしてまとめる自治体もある。
大阪市では29年、東日本大震災や熊本地震の被災地に派遣され、避難所運営に携わった職員の経験を参考に「避難所開設・運営ガイドライン」を作成。
更衣室や授乳室、洗濯物の干し場などで女性専用スペースを設置する
▽男性用トイレ1つに対し、女性用トイレは3つと多めに設置する
▽生理用品や下着などは女性が配布
▽避難所の運営委員会には男女がともに参加-といった項目を定めている。 
担当者は「いざというときに男性職員らが忘れがちな女性への対応を、はっきりと分かりやすい言葉で記した」と話す。


また、東日本大震災の被災地、岩手県釜石市と防災協定を結んだ大阪府摂津市では、女性委員だけの防災会議を設置。女性の視点を地域防災全般に取り入れるべきだとする報告書を26年にまとめた。
 「減災と男女共同参画研修推進センター」の浅野幸子共同代表は「海外では避難所で最初から女性専用のスペースをつくるところもある。日本でもこうした配慮ができるよう指針を定めており、自治体側の取り組みをもっと進めるべきだ」と話している。


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